STORY 01
創業時から変わらない“相互信頼”が築いた礎
約50年前、両国の地でアパレル企業サンマリノは創業しました。当時のアパレル業界の様態、取り巻く状況は現在とはまったく異なります。創業者・中森典雄はどのような経緯でサンマリノを創業したのか、どのような思いと理念を抱いていたのか。ここでは、メンズニットの卸としてスタートした、創業当時のサンマリノの歩みとビジネスを紹介します。
ニットに可能性と将来性を感じて独立
サンマリノは、1969年9月にメンズニット専業の卸として創業しました。創業者は現・代表役取締役会長の中森典雄です。大阪のシャツメーカーに勤めていた中森は、「“セールス”のプロになりたい」という思いを胸に抱いて独立。そのときにそれまで手がけていたシャツではなくニットを選んだのは、自由に形や柄をデザインでき、個性を出すことができるニットのポテンシャルに可能性と将来性を感じたからです。当時、ニットは“ニッター”と呼ばれる小規模の編立て業者が生産しているケースが多く、現在もサンマリノの社屋がある両国にはニッターが数多くありました。自前の工場を持たない卸業としてスタートしたサンマリノにとって両国は立地条件がよく、「資産も実績もない自分でも食い込めるチャンスがある」と中森は考えたのです。
“サンマリノ”という社名は、イタリア半島の中東部に位置する“サンマリノ共和国”に由来しています。当時、メンズファッションといえばイタリア。そこで、自分の会社の社名を考えるために世界地図を眺めていた中森は、イタリア半島にあるサンマリノ共和国という世界で5番目に小さな国を見つけました。
「幸運がつくように“ん”がつく名前を探していたので、この国の名前がいいんじゃないか、と。ほとんど験担ぎと語呂のよさで決めたような社名なんです(笑)」
中森は社名の経緯を笑いながら振り返ります。
すべての始まりは“相互信頼”から
「創業当時、私にはお金もコネもなく、あったのは体力と根性だけでした」
そんな文字通り裸一貫で始めたビジネスを支えたのは、商品の仕入先や得意先のバイヤーといったステークホルダーとの間に築いた信頼関係でした。
「当時は今以上に人間同士のつながりが重要で、そこからビジネスが動くことが多かったのです。しかし、創業したばかりの私には信用なんてありません。できることは、飛び込んでいって腹を割って正直に話すことだけでした。まずは自分が相手を信じないと、相手からの信頼は得られません。そうしてひとつずつ信頼関係を築くことが、すべてのビジネスの始まりだったのです」
その信条が“相互信頼”というサンマリノの経営理念の原点。創業50周年を迎えた現在でも「相互信頼のもと豊かな人間性と服飾文化を創造する」という社是に、その原点は息づいています。
“相互信頼”という経営理念とあわせて、中森が創業以来つねに心がけてきたことが、「とにかくお客様に喜んでもらえる服を売る、“マーケットイン”の姿勢」だといいます。
「ニット専業の卸しから少しずつ自分たちで企画開発を始めるようになり、取扱商品も増えていきましたが、“自分たちがよいと信じられるもの”を販売するようにしてきました。そして、在庫を切らさず、でも抱えないように地に足をつけて堅実に進む。それがすべての基本です」
サンマリノ創業からアパレル業界の状況は激変していますが、そのビジネスの根本となる姿勢は変わっていません。そして、それこそがサンマリノの成長と発展の源になっているのです。
株式会社サンマリノ
代表取締役会長 中森 典雄
広島県出身。高校卒業後に大阪に本社を置くシャツメーカーに入社し、東京支店に8年勤務。1969年に独立してニット専門卸業の株式会社サンマリノを創業し、代表取締役社長に就任。2008年より現職。